肝臓病の主なものは次の5つです。
1)ウイルス性の肝炎(とくにB型肝炎、C型肝炎)
2)アルコールの飲みすぎによるもの(アルコール性肝障害)
3)お薬やサプリメントによるもの(薬物性肝障害)
4)自己免疫反応によるもの(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎)
5)栄養の採りすぎによる脂肪肝やその進行した状態(非アルコール性脂肪性肝炎)
当肝臓内科クリニックでは、これら5つの肝臓病患者さんの割合は全体の肝臓病患者さんの87.5%になっています。
肝炎ウイルスはこれまでに、A型、B型、C型、D型およびE型の5つが確認されています。
A型肝炎:A型肝炎ウイルスは主に海産物に存在し、経口感染します。日本ではこの40年間で2回(1983年、1990年)の大流行がありました。感染しても慢性化はせず、劇症化もまれです。ワクチン接種により予防可能です。
B型肝炎:B型肝炎ウイルス保有者(キャリアー)は全世界で約2億4000万人、日本では110万~140万人存在していると考えられています。2000年より核酸アナログと呼ばれる経口抗ウイルス剤が使用できるようになり、肝硬変や肝不全に進行する例が減少しましたが、B型肝炎からの発がんによる死亡者数はずっと横ばいの状態です。近い将来、C型肝炎のようにB型肝炎ウイルスを体内から完全に排除できる薬剤ができれば、B型肝がん死亡者数も減少すると思われます。
C型肝炎:C型肝炎ウイルスは1989年(平成1年)に発見されました。その後2000年過ぎまで、日本での肝がん死亡者数は増加の一途をたどりましたが、抗ウイルス治療の進歩によりようやく減少しはじめ、2014年には年間3万人を切りました。2014年より出現した飲み薬の抗ウイルス剤のみの治療で、ほとんど100%の方のウイルスが消失し、発がんリスクが軽減しています。日本では、それほど遠くない将来にC型肝炎は消滅するだろうと考えられています。
D型肝炎:D型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスキャリアーにのみ感染するもので、日本国内のキャリアーはきわめて少数です。
E型肝炎:E型肝炎は人畜共通感染症といわれ、おもにイノシシ、ブタ、シカなどの動物の生肉を食することにより感染します。劇症化して死亡することもあるので注意が必要です。ワクチンはいまだ開発されていません。
B型肝炎に関する血液検査項目は多数ありますが、一般的にB型肝炎のキャリアーであるかどうかはHBs抗原が陽性であることで診断します。抗ウイルス治療が必要かどうかを判定するのには、HBe抗原、HBe抗体の状態とHBV DNA量の測定が重要です。HBe抗原が陰性でHBV DNA量が4.0未満であれば、治療の必要はなく経過観察のみで良いと考えられています。
C型肝炎のスクリーニングはHCV抗体検査で行います。このHCV抗体が陽性なら、C型肝炎ウイルスに感染したことがあると判定されます。しかし、感染した方のおよそ3割の方は自分の免疫力で速やかにウイルスを排除していますので、実際にウイルスキャリアーであるかどうかはHCV RNAの測定で陽性を確認してはじめてキャリアーであると診断できます。
肝がんの原因は、C型肝炎が約60%、B型肝炎が約15%、B型でもC型でもない方が約25%で、C型が減少し、B型でもC型でもない方が増加傾向にあります。別項に記しましたようにC型肝炎の治療が格段に進歩し、飲み薬のみで確実にウイルスを排除できるようになっていますので、キャリアーの方は速やかに治療をうけてください。肝がんになるリスクが著明に減少します。B型肝炎に対して現在使用できる抗ウイルス剤で、残念ながらC型の薬剤のように完全に体内から排除できるものはありませんが、HBV DNA量やHBs抗原量を低下させることで肝がん発がんを抑制できると考えられています。B型でもC型でもない方で肝がん発がんが増加しているといわれているのが、脂肪肝から進展したナッシュ(NASH:非アルコール性脂肪性肝炎)です。カロリー摂取オーバーの状態が続くと発がんリスクが増加していくと考えられますので、アルコール性の場合の禁酒(節酒)と同様に節食が肝要です。
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